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中植正剛 神戸親和女子大学准教授 教育工学を専門にする大学教員の日々の雑感


by toshishyun

アメリカの自動車事故の処理

12月22日の自動車事故の処理がほぼ片付いたので、簡単にまとめておきたいと思います。

どなたか必要な方のためになれば、と思います。ただし、私自身もそれほどアメリカの保険制度などに詳しくないので、ここに書いてあることはあくまでも参考にしてください。

事故で気が重いうえに、アメリカの保険会社は何度もこちらから電話をしないと全然動かないので大変だと思いますが、きちんと手順を踏めばかならず解決することなので頑張ってください。

アメリカの自動車事故の処理の流れは大まかに次のようになります。

①事故現場での情報収集→②破損がひどい場合は牽引→③事故を保険会社に連絡してClaimをあげる→④Adjuster(担当者)が割り当てられる→⑤Liabilityが認められる(相手の保険会社の場合)→⑥事故車の修理の見積もりを受ける

①事故現場での情報収集
相手の免許証の番号、相手の連絡先、車種と年式、ナンバープレートとVIN、相手の保険会社と契約番号、可能であれば現場の写真を撮っておく

②破損がひどい場合は牽引
AAAに加入しておくと無料。相手に過失がある場合は、相手の保険会社が支払う

③Claimをあげる
相手が悪い時には相手の保険会社に。自分が悪い時には自分の保険会社に。ただし、相手が悪い時でも念のために自分の保険会社にもあげといたほうが・・・。Claimをあげると、Claim Numberというのをもらうので、メモしておく。事故の情報はすべてこのClaim Numberで記録されます

④Adjuster(担当者)が割り当てられる
アメリカの担当者はこちらから何度もつっつかないと動きません。なしのつぶてになったときには、「どうなってる?」という電話を何度も入れましょう。担当者が不在のときには、同僚に内線をまわしてもらって、同僚に話をします。

⑤責任(Liability)が認められる
相手の保険会社を利用する場合は、相手の保険会社が責任を認めなければいけません。このあたりの詳しいことは私にもまだわからないことが多いので、自分の加入している保険の担当者などに相談するのがいいと思います。

⑥事故車の修理の見積もりを受けます。
見積もりの金額が、市場価格を上回ったら全損です。市場価格はおおむねKelly's Blue Bookの価格になるようです。例えば、修理の見積もりが3000ドルで、市場価格が2500ドルの車だと、全損です。あなたの手に入るお金は、修理の見積もり額か市場価格のどちらか少ないほうになります。はじめから全損扱いになる場合もあります。その場合は市場価格分があなたに支払われます。

なお、自動車が運転不可能なほど損害を受けた場合は、レンタカーを借りることができます。このとき、レンタカー代は保険会社が負担してくれます。相手の保険会社の場合は、相手の保険会社が責任(Liability)を認めたときに限るでしょう。レンタカーの期間は、私の場合は、事故の全損の見積もりが通知されてから三日以内に返却することという条件でした。


以下は私の体験です。

*** 事故の状況 ***
2008年12月22日夜。駐車場に駐車中に、相手の車に前方から激しくあたられたというものでした。私は乗車していなかったので、もちろん完全に相手に非があります。なお、私の隣の車もあてられていました。周りには多くの目撃者がいました。私の自動車は大破しており、結論から言うと全損になりました。

DAY 1 12/22

*** 事故現場で ***
まず、事故現場では、速やかに相手の運転免許書の番号、相手の連絡先、保険会社の名前、保険の契約番号を聞きました。また、相手の自動車の型や年式、ナンバープレートとともに、VIN(Vehicle Identification Number)も控えました。VINは相手に聞いて教えてもらいましたが、フロントガラスの左下あたりのにも必ず記載されています。同様に相手にも同じ情報を教えました。

さらに、現場の写真を携帯で撮影しておきました。また、私の隣の自動車も被害を受けていましたので、名刺を交換して、なにかあったときにはお互いに証言をすることを確認しました。

事故の相手が警察を呼びましたが、今回の事故はスーパーの駐車場という私有地でしたので、警察は事故現場を確認しただけで、報告書は作成しませんでした。しかし、万が一のために警察官の名刺をもらっておきました。

私の自動車も相手の自動車も大きく破損していたので、AAAを呼んで、牽引(Toe)してもらいました。こういうときのために、AAAに加入しておくことをお勧めします。牽引先をどこにしますかと聞かれたので、とても困って、最初は「じゃぁ・・・うちの前まで」と言っていたのですが、大破した車を家の前に置いておくと、警察に持っていかれてしまうと言われました。そこで、牽引してくれるドライバーの所属している修理屋さんに持っていってもらうことにしました。

家に帰ろうにも車がないので、牽引してくれた会社の車で家に帰りました。

*** Claimをあげる***
次に、事故についてのClaimを保険会社にあげなければなりません。保険会社の事故連絡用の窓口に電話をします。自分に過失がある場合は自分の保険会社になります。相手に過失がある場合は相手の保険会社になります。

私はそういうことを知らなかったので、とりあえず自分の保険会社(Farmers)にClaimをあげました。このClaimは後ほどとりさげることになりますが、相手が過失を認めなかった場合は、最悪自分の保険会社に世話になることが予想されるので、いちおう自分の保険会社にもClaimはあげておくべきだと思います。

夜に事故をしたので、私が当日にできたのはここまででした。帰宅後、忘れないうちにパソコンにファイルを作って、この日に取り交わした情報をすべて入力しておきました。これは大切なことです。なぜなら、この後、さまざまな担当者が現れるからで、それらの情報をきちんと整理しておかないとわけがわからなくなるからです。

DAY 2 12/23

*** 相手の保険会社にClaimをあげる ***
さて、次の日の朝、自分の保険会社のいつもの担当者に事故の話を報告したところ、相手の保険で処理をしたいのであれば、相手の保険会社にClaimをあげなければならないことを知り、遅ればせながら、急いで相手の保険会社(USAA)にClaimをあげることになりました。

この時点で、事故現場のもう一人の被害者に連絡をとったところ、彼はすでに相手の保険会社にClaimをあげた後でした。彼から担当者(adjuster)を聞きだし、そこに電話をしました。しかしこの担当者がいつまでも不在だったため、別の担当者に内線をまわしてもらって、自分のClaimもあげました。(USAAの電話は、担当者不在の場合は留守番電話になり、そこで0をダイヤルすると別の担当者に繋がります)。Claimをあげたら、Claim Numerというものをもらいます。これは事故の番号になり、この後ずっと必要になるので大切にとっておきます。

ところで、相手の保険会社とのやりとりなんですが、自分の保険会社の担当者を通してやるか、自分でやるかのどちらかになりますが、これは自分が加入している保険会社によって違うようです。私が加入している保険会社は、基本は自分で相手の保険会社と交渉をしなければなりませんでした。しかし、いつもの担当者が親切な日本人の方でしたので、一緒に交渉を手伝ってくれました。ただ、運悪くこの担当者が、次の日からクリスマス休暇に入ってしまい、結局しばらくは自分で交渉することになりました。

さて、保険会社に対してclaimをあげると、その事故に対してadjuster(調整者)が担当者として割り振られます。そして、adjusterに事故の状況を話します。これをstatementというそうです。(先にも述べたように、私の場合は、相手の保険会社に対してはすでに別の被害者がclaimをあげていたので、最初からadjuster(の代理)に直接連絡をしました)。

なおこの時点で、事故の相手は保険会社に事故があったことを連絡していたものの、詳しい状況を話しておらず、まだ相手からのstatementがあがっていない状況でした。この状態では、相手の会社が責任を認めるということは難しいようです。したがって、相手がstatementをあげるのを待つことになりました。

*** レンタカーを借りる ***
車社会アメリカでは、レンタカーを借りなければ移動できません。レンタカー代は保険会社が負担してくれます。しかし、私の場合は、先にも言いましたが、なかなか相手のadjusterと繋がらず、adjusterが責任を認めるまでには至っていない段階でしたので、レンタカーを借りるべきかどうかとても迷いました。そこで、自分の保険会社の担当者と相談したところ、この事故は100%相手が悪いわけだし、見切り発車でレンタカーを借りてもいいだろうということで、Hertzで借りてきました。

このときすでにclaim numberがある場合は、それをレンタカー会社に伝えることで、保険会社に直接請求してもらうこともできるそうです。私はclaim numberを伝えていたのに、なぜか保険会社に直接請求されず、あとでレシートを相手の保険会社にFAXしてお金を返金してもらいました。保険会社といろいろやって疲れてるうえにHertzと揉める気にはならず、とりあえず建て替えで我慢しました。

レンタカーの貸出期間は保険会社によっても違いますが、私の場合は、相手の保険会社であるUSAAの規定では、廃車(total loss)の査定が終わり、保障される金額が提示された日を含めて3日間でした。ガソリン代は自腹になります。クリスマスと正月をはさんだので、約2週間借りていました。

DAY3 12/24

*** 修理の見積もりを受ける ***
次に、事故車の修理の見積もりを受けます。adjusterから、どこに車を預けているのか聞かれるので、それを伝えると、見積もりの担当者が直接出向いていって証拠写真を撮り、修理工場に修理の見積もりを依頼します。私の場合は、自分の保険会社の見積もり担当者が先に見積もりをしました。


*** 相手の会社にLiabitlityが認められる ***
自分の保険会社が見積もりをしている途中に、相手の保険会社(USAA)のadjusterに連絡がとれました。この時点で、事故の相手もきちんと状況をadjusterに伝えていたようです。事故の状況をこちらからも伝えました。既に事故の相手が素直に過失を認めていたため、adjusterもこちらの事故説明をすんなり受け入れて事故の責任をすぐに認めてくれました。事故の責任を認めることを、accept liabilityといいます。もしかしたら、ここで揉める場合も多いと思うので、私はこの点はラッキーでした。

*** 自分の保険会社のClaimを取り下げ ***
相手の保険会社が責任(liability)を認めたので、自分の保険会社のClaimは一旦取り下げ(close)することにしました。なにかあれば、またClaimを再開することができます。

*** 自動車をTotal Loss Departmentへ ***
相手の保険会社(USAA)のadjusterとの電話でのやり取りで、事故の様子を話した時点で、adjusterは「全損」と見積もったようです。そして、車はUSAAのTotal Loss Department(全損査定部門)にまわされることになりました。このとき、Total Loss Departmentの指定する工場で査定をしなければならないということで、この時点で自動車を預けていた修理工場に三者通話で電話をかけ、自動車を移動させる権利をUSAAに譲渡するという旨の連絡をさせられました。その後、自動車は修理工場から、USAAの修理工場に移動させられました。修理工場がこのあとクリスマスの休暇に入ったので、3,4日あいだが空きました。

DAY 5 - DAY 8
12/25-12/28クリスマス休暇

・・・暫くTotal Loss Departmentからの連絡を待ちます。そのまま年明けを迎えました。なぜなら、Total Loss Departmentの担当者が長い休暇を取っていたからです・・・。この後の正確な日付は覚えていません

そういえば、クリスマス休暇を見越して、一枚FAXを送りました。それは自分の車の価値を証明する書類です。私の車は5900ドルで中古車屋から買ったのですが、市場価値はそれほど高くなく、ヘタをすると2000ドルくらいしかもらえません。そこで、購入価格分は出してほしいという旨の手紙と、車を購入したときのレシートをadjusterにfaxしました。しかし、もちろんfaxが届いたことなどの確認の電話などかかってくるわけありません。何度もこちらから電話して、ようやく受け取ったことを確認しました。しかし、それがTotal Loss Departmentの担当者には渡っていなかったようで、再度Total Loss Departmentの担当者に送りなおしました。はぁ、めんどくさ。

年明け以降
正月があけて、何度も何度もTotal Loss Departmentの担当者に電話をして、ようやく連絡がとれたのは、1月5日。とにかくしつこく電話でつっつきまくって提示額だけでも聞きださないと、次の中古車を買う算段も経ちませんし、自分の車がないと仕事にも差し支えますから、一日何回も、自分の保険会社の担当者と手分けしてかけました。そして、ようやく、全損で保障される金額が提示されました。日本だと向うから電話してくるようなことでも、こっちから連絡しないと伝えてくれないのです。

この時点で、レンタカーを返す日が決定したのと、次の中古車の手持ち資金がいくらになったのかわかりました。結局4500ドルと、購入金額よりは少なかったのですが、市場価格よりは高い目にだしてくれたので、これを飲むほかはありません。もっと高い金額が欲しかったら、あとは法廷に出て行くことになりますが、たかだか1000ドルくらいで法廷に出て、貴重な時間をつぶし、ストレスにまみれて暮らすのはあまり賢いとはいえませんので、これで飲むことにしました。

自動車の所有者を示すcertificate of titleにサインして1月8日にUSAAに送りました。そこから3日間、中古車を買いにあちこち走り回り、ようやく中古車を購入です。いい中古車を見つけるのは大変でしたが、その話はここではあんまり関係ないので割愛です。

さて、もちろんアメリカのことです。すんなり4500ドルのPay Checkが送られてくるはずはありません。

certificate of titleを送って3日経ったころに、電話をしました。certificate of title、受け取ったか?と聞くために。Total Loss Departmentの担当者はもちろん留守録です。何回も何回も留守録に入れても不在。もちろんむこうからコールバックなんてしてきません。「あなた、まだそこで働いてるんですか?」と思わず皮肉を録音してしまいました。

仕方がないので、adjusterに電話するも不在。adjusterの同僚に確認をとってくれと言うも、よくわからない様子。仕方がないので、total loss departmentの担当者の同僚に確認をとりました。とりあえずcertificate of titleは受け取った模様で、その審査をしているとのことです。certificate of titleの審査なんか、なんで必要なの?

一方、レンタカーの領収書もfaxしましたが、こちらもなしのつぶて。adjusterに何度も電話して、ようやくadjusterからコールバック。レンタカーの建て代えた分の570ドルは、ようやく本日1月23日に受け取りました。

そして、今日、total loss departmentの担当者の同僚にようやく連絡がついたので、4500ドルのpay checkをまだ受け取っていないと伝えたところ、ようやく送る処理をしているようです。


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すべてが終わっておもうことは、自分の保険会社の担当者には、信頼できる人を選ぶことです。私の場合は自分が6割程度の交渉を受け持ちましたが、残りの4割程度は自分の保険会社の担当者がやってくれました。三者通話で支援してくれたこともあります。連日一人で相手の保険会社に電話をかけ続けるのに疲れたら、この担当者に「そちらからもつっついてください」お願いしていました。しかも日本人の方だったので、その分ストレスが軽減しました。日本語でコミュニケーションできるということよりも、こういう習慣は日本人なら知らないだろうということを理解して支援してくださるからです。私の場合は、レンタカーを借りるときに、相手がliabilityを認めていなくても、もう借りてしまって請求を勝手に向うにまわすぐらい強気でいけばいいというアドバイスを受けたり、こういう場合にはどんどんプッシュしてしつこいくらい電話をかけたほうがいい、というようなアドバイスをいただきました。また、これは日本人だからだというわけではなく、その担当者が親切だっただけですが、相手に送るFAXの文面も一緒に考えてくださいました。いろいろと専門的な知識を持った人の支援があったので、交渉なども自信を持ってできたのだと思います。
by toshishyun | 2009-01-24 17:56 | アメリカ文化