中植正剛 神戸親和女子大学准教授 教育工学を専門にする大学教員の日々の雑感


by toshishyun
火曜日、兵庫県山間部のS小学校の授業研究会にお邪魔した。S小学校は全校生徒が90数名の小規模な小学校である。お昼休みに到着すると、年齢の異なる男女の児童たちが校庭で一緒にサッカーボールで遊んでいる元気な様子が目にとびこんできた。異年齢の子どもたちが共に育つという都会では見られにくくなった姿である。校舎は築6年のきれいな木造で、オープンスペースを贅沢に配置したゆったりと落ち着いた環境の学校だ。玄関のホワイトボードには、とてもきれいな字で歓迎のメッセージを用意していただいた。

窓口となる先生や研究主任の先生と事前に何度かお話しをしたが、研究の進め方について八方手を尽くしながらも、どのようにして研究として高まりをもたせられるかが課題となっているとのこと。今日はその部分で何かよいものを残せたら、という課題意識を持ちながら臨んだ。

授業内容は、新学習指導要領で6年生から5年生に下りてきた単元である「単位量あたりの大きさ」であった。新卒4年目の若手の先生が授業者であった。授業の導入では、ICTを活用しながら、学校行事で訪れた旅館の各部屋の混み具合を、児童の顔写真を用いたスライドをテンポよく提示することで、児童が生き生きと興味をひきつけられていた。S小学校は小規模校なので、若手教師が授業の中で小気味よくICTを活用する姿を見ることでICT活用が全校的に広まってゆくだろう。
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# by toshishyun | 2010-07-08 16:51 | 授業研究
ツイッターというのはありがたいものだ。今日の午後にツイッターで知り合った富山県の小学校の先生が「電子黒板を思考の道具とするには」という課題を提起されたことが、自分なりに協同的問題解決の道具としての電子黒板について考えをすすめるきっかけとなった。

前提として、探求型のプロジェクト型学習ではなく教科指導という枠で考えることとした。

まずは、電子黒板というツールについて考える前に、通常の授業で次のことができているか再度チェックする必要があろう。

1. 課題提示に工夫があるか : 電子黒板を協同的問題解決の道具とするためには、課題が多様な思考を誘発するものでなければならない。単線的な思考を生み出すだけの課題では、協同思考の道具を用意しても深みのない活動になってしまう。

2. 生徒の個々の問題解決過程を可視化できているか : 教科の内容としての記述である対象記述に加えて、問題解決過程の記述であるメタ記述が普段からしっかりと可視化されているか。ノート指導や発表の中で、メタ記述を表現させる手立てができているか。また、そのようにして出された思考過程の共有ができているか。思考の結果ではなく経過がリアルタイムに共有されているか。

3. 机間指導を中心とした、形成的評価と支援ができているか :協同思考をコーディネートする教師として、生徒の思考を瞬時に拾うことのできる手立てがあるか。教育的な瞬間をみとって必要な支援ができているか。これは2のメタ記述の可視化がしっかりとできていないとおぼつかない。

これらの点が普段の授業で充実していなければ、電子黒板を協同思考の道具と位置づけるのは難しかろう。特に2を現状の授業の中で充実させることのよさは、電子黒板上における活動を、単なる発表会ではなく協同問題解決として展開するために重要な点であると思われる。

・・・このようなことを考えていると先の先生から指摘があった。「子どもたちの思考過程がノートに残り、それを教師がチェックして個別指導したり、面白い考えを拾って全体で話し合ったり。ん?今のノート、黒板の授業とどう違うんだ?」

ここで再びツールとしての電子黒板について考えなければならないだろう。子どもたちの思考過程、教師の個別指導、全体での練り上げ・・・その中で普通の黒板とは違う電子黒板のありかたとはどのようなものだろうか。

現行の電子黒板は提示の装置としてデザインされており、協同思考の装置としての機能は弱い。というわけで、デザインそのものからやり直す必要がある。しかしそれを言ってしまえばおしまいなので、協同的問題解決のツールとしての電子黒板として最低これは必要という機能を挙げたうえで、いまの電子黒板でできそうなことを探ってみる。

まずは現行の電子黒板を無視して、協同的問題解決のツールとしての電子黒板に必要な機能を考える。

1. 各生徒にデジタルガジェットを持たせて、それらの画面を電子黒板に転送・投影したり、電子黒板の画面をガジェットに転送する仕組み: つまり、協同的思考の場と各生徒の個人思考の場を往還する仕組み。現状のように教師が板書に生徒のノートを転記するのは時間の無駄。ワークフローを改善すべき。さらに、電子黒板&デジタルガジェットの特性であるマルチメディアコンテンツを取り扱うことで、問題解決のプロセスそのものが黒板&ノートのコンビとは違ったものになることが期待できる。

2. 複数の生徒が同時に電子黒板の制御権を獲得できるようにする仕組み: 一人で制御するというデザインでは提示装置の粋を出ない。現行のままでも、会議におけるホワイトボードと同じように誰かが操作をしながらみなでそれを話し合うということもできる。しかし、協同で思考をすすめるためにもう一歩進んだ機能を織り込んで、それを新しい形で活用し、授業を変革する工夫を模索することが教育を進化させるということだろう。

3 協同思考のための統合ソフトウェアを開発する :1,2が実現しても、教師が独自に協同思考のためのソフトウェアを開発していては普及はおぼつかない。テキストを含む様々なマルチメディア教材と、1,2を統合して処理できるようなラーニングマネジメントシステムの開発が不可欠。各教室の学びを学校全てで共有したり再利用する機能も不可欠

それから、電子黒板は50インチ程度ではとてもではないが小さすぎるという点も指摘したい。

以上の点をふまえて、現行の電子黒板でとりあえずアプローチがはじめられるのは2であろう。

イメージ的にはマイクロソフトのMischiefが近いかもしれない。友人が開発に関わっていて、ホームページで紹介しているのだが、これはプロジェクターに接続した1台のパソコンに20数台のマウスを接続して、複数の生徒のマウスポインターが画面に現れるというものだ。

http://moraveji.org/projects_med.html

アルファ版が日本語でも出ており、パワーポイントのアドオンとして利用できる。

http://www.microsoft.com/japan/multipoint/mouse-mischief/default.aspx

もともと、予算の少ない発展途上国向けに開発されたソフトなので、必要な台数のマウスさえ揃えれば使える。ただし、教師が用意した多肢選択式問題を回答させるというような使い方しか想定されていないようで、問題解決学習の練り上げのような高度なことはできないのが痛い。しかも、文字入力もできない・・・。もっと調査が必要だ。
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# by toshishyun | 2010-06-27 22:57 | ラーニングとテクノロジー

丹波市幼稚園実習訪問

本学学生の幼稚園実習の訪問で、兵庫県丹波市まで足を運んだ。

園長と研究主任が出迎えてくださった。この園は教諭の力量向上に力を入れているが、丹波市全体でも各園で公開保育を実施して教諭同士の切磋琢磨に取り組んでいるということであった。

各園は独自の研究テーマを決めているが、今日お世話になった園では、児童の自主的な活動を支援する環境づくりをテーマにされている。先日実施された公開保育では、市内各園から教諭を1人ずつ招いて、午前中は児童が自主的に遊んでいる姿を公開し、午後には園の歩みの話などをして情報交換をしたということであった。

幼稚園の職員研修についてはこれまで具体的な取り組みを実際に耳にすることはなかったのでこういう話を聞くのは大変勉強になった。実習生だけでなく、実習訪問を担当した教員まで学ばせていただいたというわけである。

丹波市は今後、認定子ども園への移行を経て民間に幼稚園・保育所事業を移管すると方向が決まっているということだが、研究主任の先生は、目の前の児童のために最後まで教諭としての力量を高めあってゆきたいという強い思いを語られた。その情熱と姿勢に共感した。
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# by toshishyun | 2010-06-25 14:21 | 授業研究
週末に本学で開催される国際教育フォーラムのレセプションに出席。以前から交流があり、本年度も僕が学生を引率してつれてゆくことになっている、カナダのトロント大学附属小学校のモーレイ校長と話をしていて、同校が6年前から授業研究にとりくんでいることを知った。そして、その指導助言をしてきたのが、アメリカのスタンフォード大学で僕のメンターとなってくれたアキ先生だということがわかってお互いにびっくりした。世界は狭い。

カナダとアメリカと日本の授業研究をどう比較してゆくのか、授業研究のサスティナビリティとはどういうものなのかについて協同で考察をすすめてゆくことをお互いに約束した。モーレイ校長は、日本のローカルスクールの実態について照らし合わせながらカナダの実践についての考察をすすめたいということをおっしゃっておられた。ご滞在中にもう一度機会を作って話しがしたい。

9月にトロントに行くのが楽しみになってきた。カナダ版の授業研はいかなるものだろうか。
カナダ人の先生に感想や思うところをいろいろ聞いてみたい。
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# by toshishyun | 2010-06-22 21:12 | 授業研究
兵庫県の山間部にあるK小学校の校内授業研究会にお邪魔した。この小学校は、算数の授業研究の中心にノート指導を設定して研究をすすめている。

玄関に到着するなり、僕の名前でよびかけていただいた挨拶と「校長室までどうぞ」というメッセージの書かれた黒板が目に入る。初めて訪れる学校だったが、学校をあげて歓迎していただいて気持ちがほぐれた。このようなおもてなしの心を示していただいて気持ちよくお付き合いが始まるのはすがすがしい。それと同時に、授業研究の取り組みに対する学校の意気込みや姿勢が感じられ、自分もしっかりと話題提供しなければ、と身がひきしまる思いであった。

研究主任のH先生は今年赴任されて間もないということだったが、今日のワークショップ型の事後協議会は、事前の電話打ち合わせで僕が「何か事後協議会の工夫はされていますか」と言った一言をきっかけにして普段されている事後協議会の方法から計画変更されたそうで、そのような前向きで柔軟な姿勢を見るにつれ、K小学校の学校研究がこの先豊かに活性化してゆく兆しが見える思いがした。

他に授業研究の方法の課題として僕が提案したのは、現状の年間計画を変更して一人の教師が年間複数回研究授業をするというものであるが、これも学校長が真剣に検討してくださっている。K小学校の実行力を感じることができた。この提案をうまく実行に移すことができればK小学校の授業研究の質はますます向上することだろうと期待している。

講演で僕がさせていただいたお話は、ベテランのH先生と教頭のA先生がその本質を瞬時に掴まれてしっかりと受け取ってくださり、さりげなく交通整理してくださった。結果的に学校として目指している方向とうまく講演内容が合致したことがわかり、話者としてはうれしい限りである。

熱心にメモを取りながら聞いてくださっていた先生方に混じって、じっと耳を傾けていただいた一番若い先生の姿も印象に残ったが、そんな様子を見ながら、僕はちょうど氷河期世代で教員の採用も少なかった世代だから、ベテランと若手をつないでいけるちょうどいい立場にいるのだと感じた。

熱心な先生方のなかで、真摯に授業に向かい合いながらじっくりと授業をされていた授業者のF先生の学ぶ姿勢が印象的な授業研究だった。いい学校だなと充実感とともに校門を後にした。
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# by toshishyun | 2010-06-21 22:45 | 授業研究