中植正剛 神戸親和女子大学准教授 教育工学を専門にする大学教員の日々の雑感


by toshishyun

<   2010年 07月 ( 2 )   > この月の画像一覧

今日は昨年アメリカで見かけた算数教具「デジブロック」を紹介したいと思います。これは、低学年の児童が十進位取り記数法を学習するための教具です。

e0149551_13352636.jpg

(写真 http://digiblock.stores.yahoo.net/classroom-bundles.html より引用)

低学年の児童にとって、十進位取り記数法を体感的に理解することは、重要であると同時に、困難を伴うものです。「繰り下がりのある筆算ができない」などという声を教師から聞くことがありますが、機械的に筆算を教える以前に、児童に十進位取りのイメージを体得させることができていたかどうかを点検してみるとよいでしょう。

というのも、筆算というのはアルゴリズム(形式化された手順)であるわけで、アルゴリズムとは、本来の思考活動を短縮して気軽に実行するためのものであり、そのウラで起こっていることへの理解が伴ってこそ、そのよさがわかり、有効に使えるようになるからです。また、理解を伴ってできることで、アルゴリズムにつまづいたときに、自分の力で直していくことができるのです

さて、十進位取り記数法を学ぶためにはさまざまな教具が存在します。アメリカでよく見かけたのは、Base10 Blocksというものです。
e0149551_13323666.jpg


この教具は、単位量の大きさを元にして面積や体積の考え方を学ぶには適していますが、十進記数法を学ぶにあたっては問題があります。たとえば、Base10 Blocksを使って数を表すと次のようになります。
e0149551_13413122.gif

このような表現方法では、100の位の形(面)と、10の位の形(棒)と、1の位の形(立方体)が異なり、十進数の正確な概念を表したことにはなりません。十進数の特徴は、10の位、あるいは100の位だけに注目したとき、そこには1の位と同じく、1~9の数が並んでいるということです。つまり、どの位に着目しても、ブロックは同じ形をしていなければならないのです。

この点、日本の算数セットに含まれている数え棒は優秀です。
e0149551_075677.jpg

(写真 http://www.gakkoukyouzai.com/store/show_product/891 より引用)
棒を10個集めて束にしたときに、できた束と元の棒の形状が似ているからです。しかし、それぞれの形状が似ているとはいえ、やはり似て非なるものです。たとえば、10を表す束を見たとき、それが10の位の1、つまり集合体として1つのものを表すのか、それとも棒が10個集まった状態を表すのかにあいまいさが残ります。


デジブロックはうまくできています。1を表すブロックを10個集めると、10の位を表す一回り大きなサイズのブロックが1個できあがります。1を表すブロックの形状と10を表すブロックの形状はまったく同じです。ただし、10を表すブロックのサイズは、1を表すブロックのサイズの10倍です。



同様に、10を表すブロックを10個集めると100を表すブロックが1個出来上がります。



たとえば、125は次のように表されます。
e0149551_23505778.jpg

(写真: http://www.digi-block.com/product/ より引用)

まとめると、デジブロックの特徴は次のとおりです。

・1の位、10の位、100の位など、それぞれの位を表すブロックの形状が同じである。十進記数法において、どの位を抽出しても他の位と同様に1~9までの数で構成されるという、まるでフラクタルのような特徴に対応している。
・位が10倍になると、ブロックのサイズが10倍になる
・ある位のブロックが10個そろうと、上位のブロックにカプセル化される。カプセル化されることで、それはもはや10個ではなくなり、ひとまとまりとしての1として認識される
・カプセルを開くと、下位の数に分解が可能である。

いかがでしょうか。僕はなかなかよくできた教具だと思います。こういうブロックでしっかりと遊びながら十進位取りの感覚を身につけてこそ、繰り上がりや繰り下がりのある計算について、理解をともなったマスターができるのではないでしょうか。

しっかりと位取りのイメージができていれば、たとえば繰り下がりのある筆算の指導をする際に、上位数を崩して下位数に10を借りてくるということもスッと理解させられるはずです。そして、いったん理解ができれば、あとは繰り返し練習で定着あるのみです。

さて、デジブロックはハーバード大学ビジネススクールの教授が考え出した教具で、彼の息子さんから紹介してもらいました。デジブロックのホームページはこちらです(英語です)。

http://www.digi-block.com/about/howItWorks.html

購入は下記のページからとなっていますが、日本に輸入できるのかどうかは未確認です。例によって僕はなんとかして入手しようと思いますので、お知り合いの方で見てみたいという方は声をかけてください。なお、ホームページでは、トモエ算盤が扱っていると書いていますが、残念ながらトモエそろばんのホームページでデジブロックが見つかりません・・・。

いずれにせよ、入手方法についてはこれから調査をして、後日このブログで報告します。

http://digiblock.stores.yahoo.net/

参考文献: 片桐重男(2004)「数学的な考え方の具体化と指導 -算数・数学科の真の学力向上を目指して-」 新版数学的な考え方とその指導 第1巻 明治図書
[PR]
by toshishyun | 2010-07-20 00:19 | ラーニングとテクノロジー
火曜日、兵庫県山間部のS小学校の授業研究会にお邪魔した。S小学校は全校生徒が90数名の小規模な小学校である。お昼休みに到着すると、年齢の異なる男女の児童たちが校庭で一緒にサッカーボールで遊んでいる元気な様子が目にとびこんできた。異年齢の子どもたちが共に育つという都会では見られにくくなった姿である。校舎は築6年のきれいな木造で、オープンスペースを贅沢に配置したゆったりと落ち着いた環境の学校だ。玄関のホワイトボードには、とてもきれいな字で歓迎のメッセージを用意していただいた。

窓口となる先生や研究主任の先生と事前に何度かお話しをしたが、研究の進め方について八方手を尽くしながらも、どのようにして研究として高まりをもたせられるかが課題となっているとのこと。今日はその部分で何かよいものを残せたら、という課題意識を持ちながら臨んだ。

授業内容は、新学習指導要領で6年生から5年生に下りてきた単元である「単位量あたりの大きさ」であった。新卒4年目の若手の先生が授業者であった。授業の導入では、ICTを活用しながら、学校行事で訪れた旅館の各部屋の混み具合を、児童の顔写真を用いたスライドをテンポよく提示することで、児童が生き生きと興味をひきつけられていた。S小学校は小規模校なので、若手教師が授業の中で小気味よくICTを活用する姿を見ることでICT活用が全校的に広まってゆくだろう。
[PR]
by toshishyun | 2010-07-08 16:51 | 授業研究