中植正剛 神戸親和女子大学准教授 教育工学を専門にする大学教員の日々の雑感


by toshishyun

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授業研究 教師の授業を見る目

Sherinのビデオクラブの研究。自分達の授業をビデオに撮り、同僚と協調してその分析をするというプロフェッショナルディベロップメント。

人は、専門的な経験を積むと、ある現象のどこに注目するかが変わってくる。つまり、どんな職業でも、その職業なりのモノの見方というものを身につけてゆく。Goodwinは、そういう専門家なりのモノの見方を「プロフェッショナルビジョン」と名づけた。

教師のプロフェショナルビジョンを研究したビデオクラブでは、実践のあいだに、教師の授業の語りが次のように変化した

・ 教師の教え方から、生徒の学習活動に注目が移った
・ 教え方をどう改善したらいいかという提案から、授業で実際に何が起こっているのかを理解しようとするようになった。
・ 授業で起こったことを単になぞっているだけの発言から、その出来事を深く理解しようとする発言になった

これは、アメリカの授業研究における討論でも、確認されている。つまり、授業研究を始めたばかりのグループでは、当初は、先生の教え方をどのように改善したらよいのかという議論が中心に行われるが、次第に、生徒がどのように学んでいるのか、観察したデータを用いてその実態を理解することに時間が割かれるようになり、その理解に基づいて次の改善を考えようとする討論へと変化してゆく。

(参考文献:Sherin, M. G., & Han, S. Y. (2004). Teacher Learning in the Context of a Video Club. Teaching & Teacher Education: An International Journal of Research and Studies, 20.)
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by toshishyun | 2009-06-21 09:54 | ラーニングとテクノロジー
教師の成長のための、協調的探究活動 (collaborative inquiry)

効果的なプロフェショナルディベロップメントとは,
・ 教師の仕事に根差したものであること
・ 教師が探求と省察をしっかりできること
・ 教師同士が協調すること
・ 学校や学区の他の取り組みと関連があること
・ 信頼関係を構築し、リスクをとることができるような雰囲気や習慣を確立すること
(Darling-Hammond and Mclaughlin (1995) and Hawley and Valli (1999))

教師の学びの共同体を作ろうとするときには、その学校の特徴に沿って、習慣や価値観や信念を検討し、作り替えるという作業をしながら、リカルチャリング(reculturing)を起さなければならない。 (Fullan 2000) それは、単に組織を作り替えたりするだけでは十分ではない。教師がきちんとデータを分析して、教育実践を改善したり、リカルチャリングのプロセスに主体的に関わっていけるような具体的な支援が必要である。リカルチャリングには3年~6年かかる。

教員がデータを使いこなして、授業を改善することができる能力を高めなければならない  ←これは授業研究の目標の一つ。授業改善のためのデータの使いこなし方を学ぶ仕掛けが必要。どこに着目してデータを集めるのか、集めたデータをどう読み解くのか。


(参考文献: Nelson, T., & Slavit, D. (2008). Supported Teacher Collaborative Inquiry. Teacher Education Quarterly, 35.)

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ほとんど備忘録・・・。中途半端・・・。
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by toshishyun | 2009-06-20 08:49 | ラーニングとテクノロジー

算数教具 ジオボード

アメリカでよく使われる教具に、ジオボードというものがあります。

このように、プラスティックのボードに、規則正しく並んだペグがついていて、輪ゴムをひっかけるというだけのシンプルな教具です。
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ジオボードは、小さな子どもから大人まで、無限に学び方が広がるすてきな教具です。三角形や四角形、平行や垂直、対称、面積、角度、などなど、いろんなことが学べます。日本の小学校で取り入れている先生もたくさんいるので、ネット上で指導案が検索できます。知能育成の教室や塾でも取り入れられているようです。

ジオボード自体はそんなに高いものではないのですが、アメリカからの取りよせだと2,3週間かかる場合があります。1つや2つだと、送料のほうが高くかかってしまいます。

インターネットには、Flashのジオボードがあります。

まずはこれ。
http://nrich.maths.org/content/id/2883/circleAngles.swf

使い方はこんな感じです。
e0149551_5482851.jpg


このジオボードの特徴は、ペグ(釘)の並び方や数を変えることができるので、年齢や内容に合わせたジオボードが作れるところです。


弱点は、次のように、一部が凹んだ形をつくれないことです。(画像は合成です)。
e0149551_7533938.jpg


次のジオボードなら、凹んだ形でも作ることができます。
Math Playground

使い方はこんな感じです。
e0149551_7555998.jpg


説明にもあるように、このジオボードの特徴は、作った形の面積や、周囲の長さが表示されるところです。表示する前に、まずは自分で考えてみて、答え合わせにつかうのがいいと思います。

上記で挙げたようなちょっと複雑な形や、多角形の面積を求めるのに使うと面白そうです。作った形を印刷して、補助線を書きこみながら考えたり、いろんな学び方ができそうです。

このジオボードは、さっきのジオボードのように、ペグの並び方や数を変えることはできません。
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by toshishyun | 2009-06-08 05:56 | ラーニングとテクノロジー
以前に紹介した文献管理ソフトのZoteroですが、Ciniiからのデータの取り込みが、そのままではうまくいきません。

普通は、アドレスバーのアイコンをクリックするとデータを取り込めますが、次のようにエラーが出ます。
e0149551_1423934.jpg

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そこで、CiNiiからの書誌情報の取り込み方を紹介します。いったん、Refer/BiblX形式でダウンロードしてから、インポートします。

①CiNiiの検索結果画面です。
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②右下に、Refer/BiblXというボタンがあるのでそれをクリックします。
e0149551_14113550.jpg


③Refer/BiblX形式のファイルをダウンロードしてから、テキストエディター(メモ帳など)で開くといいのですが、面倒なので、僕はいきなり開きます。
e0149551_1415162.jpg


④開いたら、コピーします。ショートカットキーで Ctrl+Aで選択しておいてから、Ctrl+Cでコピーできます。
e0149551_14183662.jpg


⑤Zoteroの歯車のアイコンのメニューから、「Import from Clipboard」を選択します。先ほどコピーしたデータがZoteroにインポートされます。
e0149551_1419587.jpg


⑥こんな風にインポートされます。インポートされたアイテムは、日付の名前がついたコレクション(フォルダー)に格納されています。
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⑦適宜、適当なコレクションにコピーして整理します。


⑧整理ができたら、日付の名前がついたコレクションは削除します(コレクションの上で右クリック→削除)。
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検索用キーワード: CiNii Zotero 取り込めない 取り込み
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by toshishyun | 2009-06-06 08:29 | ラーニングとテクノロジー
リー・ショーマン(Lee Shulman)のペダゴジカルコンテンツナレッジ(PCK)について、ちょっと整理しながら、授業研究や教員養成について考察したいと思います。PCKというのは、教師に必要な専門職としての能力です。

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教師が授業をするときには、二通りの知識が必要とされます。1つは教える内容の知識で、Content knowledge(コンテントナレッジ)と言われます。算数や数学や英語やコンピュータ、先生が出来なければ、それを教えることもできません。だからといって、Content Knowledgeばかりがあっても、いい授業はできません。英語がバリバリ話せるから英語が教えられるかというとそうでもないし、コンピュータがバリバリできるからと言って情報教育ができるわけではありません。名選手必ずしも名監督ならず、とはよく言ったものです。

もう1つは教え方の知識で、Pedagogical knowledgeと言います。例えば、子どもの理解に沿って、どうやって授業を組み立てたらいいか、どうやって専門用語をかみ砕いて説明したらいいか、板書の書き方はどうすればいいか、そんな知識です。けれど、教えるのに必要な知識、Pedagogical knowledgeだけがあっても、いい授業はできません。いくら授業が上手で、子どもたちのやる気を引き出すのがうまい先生でも、自分の全然知らないこと、できないことを、最初から上手に教えるのは難しいわけです。ですので、新しい教科が増えたときなんかは、先生は大変です。小学校英語なんかがそうですね。あるいは高校の情報科なんかもそうです。

というわけで、教師にはContent knowledgeとPedagogical knowlegeが必要なんですが、Shulman以前は、それぞれ、別々に考えられてました。けれど、これらは切り離して別々に扱えるもんではないんですね。教え方というのは、内容に密接に関わっています。例えば、子どもたちには、口だけで説明するよりも、実際に手を使ってやらせたほうがわかりやすいっていうのは教え方の知識です。けれど、じゃあ、具体的にどうやって教えたらいいのかは、実際の内容がないと組み立てられない。つまり、一般的な「教え方の知識」というものはあるけれど、実際には、「分数のかけざんを小学5年の子どもに教える教え方と内容の組み立て」とか、「標本調査法のよさを小学6年の子どもたちに教える教え方と内容の組み立て」とかいうように、内容とセットになった個別具体的な教え方の知識があるわけです。そういうわけで、教師の頭の中では、教える内容と教え方が相互に関連しながら存在するわけです。

Content knowledgeでもない、Pedagogical knowledgeでもない、 それらが関連しながら成り立つ知識のことを、Pedagogical content knowledge (PCK) ペダゴジカル・コンテンツ・ナレッジといい、それが教師の専門性ということになります。

PCKを発達させるためにはどうしたらいいのか。これが教師の専門性育成の課題になりますが、なかなか難しい。なぜなら、PCKは、実践の知識で、実践を通して獲得されていくものだからです。ただし、現場で放っておいてPCKが勝手に獲得されることを期待するのではなく、やはりそこには仕掛けが必要になってきます。授業研究、教材研究の意義もここにあるわけです。

特に、授業研究は、目の前の生徒の事実から学び、PCKを育成していくというところに意義があります。そして、PCKを育成する効果的な場とするためには、授業研究のデザイン(研究授業や事後討論会のプロトコル)やツールキット(指導案のフォーマット、研究授業の際のデータ収集のフォーマット)といった仕掛けがしっかりしていないといけません。また、授業研究の評価においても、教員のPCKがどれだけ広がったか、深まったかを評価尺度に含めることが、授業研究の改善につながってゆきます。

(Shulman, L. S. (1986). Those Who Understand: Knowledge Growth in Teaching. Educational Researcher, 15.)

Lee Shulman - Wikipedia, the free encyclopedia
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by toshishyun | 2009-06-05 07:03 | ラーニングとテクノロジー

授業研究と職場の雰囲気

授業研究をプロフェッショナルディベロップメントとして見ると、教師の効果的な学びのための共同体として、3つの要件がある。

1. 教師が教えるということを見直し、再定義できるような学びの共同体であること
2. 教師に対しては、あらかじめ決められた「教え方」を教えるのではなく、教師自らの学びが活性化されるような共同体であること。
3. お互いを信頼し、批判を恐れずに討論できる共同体であること

(WILSON, S. M., & BERNE, J. (1999). Chapter 6 : Teacher Learning and the Acquisition of Professional Knowledge: An Examination of Research on Contemporary Professlonal Development. Review of Research in Education, 24(1), 173-209. doi: 10.3102/0091732X024001173.)


日本人は批判や意見の受け取り方が苦手だから、とりわけ3が難しそうだ。アメリカ人は、批判・意見と個人の人格を、比較的切り離して考えている。しかし、日本人は、批判・意見と個人の人格の重複している部分が大きいので、他人の意見や批判を「自分自身」に向けられたものと受け取って傷つきやすい。「上から目線」「生意気」などと言われるように、批判や意見を言った人に対する風当たりもかなりきつい。職場によっては、例え研修であっても、下手な批判や意見を言うと、同僚や先輩や管理職から総攻撃を食らうことになる。

そういうことのないような、信頼できる土壌、安心して批判や意見をやり取りできる土壌は、普段の何気ないやり取りから形成されるものだろう。批判・意見と個人の人格が切り離せない日本では、より一層、普段からの関係づくりが大事になる。普段から上司や管理職が人の悪口ばかり言ってるような学校では、校内の授業研究を活発な学びの場にすることはできないだろうし、普段から批判や意見を言ってもそれを受け入れることのできる先輩や管理職がいる学校では、授業研究や教員研修でも実りのある学びの場になるだろう。そう考えると、授業研究にとって、学校のリーダーの人柄というのは実に大きなものだと思う。
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by toshishyun | 2009-06-04 09:04 | ラーニングとテクノロジー