中植正剛 神戸親和女子大学准教授 教育工学を専門にする大学教員の日々の雑感


by toshishyun

カテゴリ:授業研究( 7 )

高等学校の学力向上

しばらく放置していたブログを再開しようと思う。

今月は県内のK高等学校で学力向上についての話をすることになっているので、その準備を進めている。ポイントは3つ。

1. 授業研究を学校改善の文脈に位置づけ、生徒理解をその中心に据える

高校における授業研究は回数が少なく、形式的に済ませているものも少なくない。授業研究をワークショップ型で実施することで教師同士がそれぞれの内省を共有しあえる場をつくる。教師の指導方法ではなく、生徒の実態理解を対話の中心に据えることで、教師同士が共に学びあえるコミュニティーを作り上げてゆき、それを通して、授業改善やカリキュラム改善につなげてゆく。

2. リフレクションに徹底的に取り組む

最近の高校はキャリア教育や体験型の校外学習や留学体験を取り入れている学校が増えている。しかし、体験しっぱなしの場合も多い。デューイによると、経験は内省を通すことで知識として再構築されなければ学びにはならない。生徒にリフレクション(ふりかえり)をさせる工夫をする。そして、体験を同級生や後輩とシェアする機会を設けることで、生徒同士が刺激しあう、K高等学校独自の学びの共同体文化を創りだす。それを教科への学習の力にかえす。

3. 書くことを軸にして学力の向上をはかる

文章が書けない社会人が問題になっている。大学生でも、文章が書ける学生と書けない学生の格差は大きい。高校までにどれだけ文章を書いてきたのかが、その後の能力形成に大きな影響を及ぼしている。

毎回の授業の最後に簡単な授業の振り返りを書かせ、それを通して教師が生徒とコミュニケーションをはかることで、文章で自分の思考や感情を表現する習慣を積み上げる。よい感想はクラスにフィードバックすることで授業の活性化をはかる。すべての教科で3年間続けることで、短い時間でしっかり書く力がつく。書く力だけでなく、発表やディスカッションでの言語能力にもつながってくる。このような力は、教科における言語活動や、2のリフレクションに活きてくる。
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by toshishyun | 2011-12-03 23:04 | 授業研究
火曜日、兵庫県山間部のS小学校の授業研究会にお邪魔した。S小学校は全校生徒が90数名の小規模な小学校である。お昼休みに到着すると、年齢の異なる男女の児童たちが校庭で一緒にサッカーボールで遊んでいる元気な様子が目にとびこんできた。異年齢の子どもたちが共に育つという都会では見られにくくなった姿である。校舎は築6年のきれいな木造で、オープンスペースを贅沢に配置したゆったりと落ち着いた環境の学校だ。玄関のホワイトボードには、とてもきれいな字で歓迎のメッセージを用意していただいた。

窓口となる先生や研究主任の先生と事前に何度かお話しをしたが、研究の進め方について八方手を尽くしながらも、どのようにして研究として高まりをもたせられるかが課題となっているとのこと。今日はその部分で何かよいものを残せたら、という課題意識を持ちながら臨んだ。

授業内容は、新学習指導要領で6年生から5年生に下りてきた単元である「単位量あたりの大きさ」であった。新卒4年目の若手の先生が授業者であった。授業の導入では、ICTを活用しながら、学校行事で訪れた旅館の各部屋の混み具合を、児童の顔写真を用いたスライドをテンポよく提示することで、児童が生き生きと興味をひきつけられていた。S小学校は小規模校なので、若手教師が授業の中で小気味よくICTを活用する姿を見ることでICT活用が全校的に広まってゆくだろう。
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by toshishyun | 2010-07-08 16:51 | 授業研究

丹波市幼稚園実習訪問

本学学生の幼稚園実習の訪問で、兵庫県丹波市まで足を運んだ。

園長と研究主任が出迎えてくださった。この園は教諭の力量向上に力を入れているが、丹波市全体でも各園で公開保育を実施して教諭同士の切磋琢磨に取り組んでいるということであった。

各園は独自の研究テーマを決めているが、今日お世話になった園では、児童の自主的な活動を支援する環境づくりをテーマにされている。先日実施された公開保育では、市内各園から教諭を1人ずつ招いて、午前中は児童が自主的に遊んでいる姿を公開し、午後には園の歩みの話などをして情報交換をしたということであった。

幼稚園の職員研修についてはこれまで具体的な取り組みを実際に耳にすることはなかったのでこういう話を聞くのは大変勉強になった。実習生だけでなく、実習訪問を担当した教員まで学ばせていただいたというわけである。

丹波市は今後、認定子ども園への移行を経て民間に幼稚園・保育所事業を移管すると方向が決まっているということだが、研究主任の先生は、目の前の児童のために最後まで教諭としての力量を高めあってゆきたいという強い思いを語られた。その情熱と姿勢に共感した。
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by toshishyun | 2010-06-25 14:21 | 授業研究
週末に本学で開催される国際教育フォーラムのレセプションに出席。以前から交流があり、本年度も僕が学生を引率してつれてゆくことになっている、カナダのトロント大学附属小学校のモーレイ校長と話をしていて、同校が6年前から授業研究にとりくんでいることを知った。そして、その指導助言をしてきたのが、アメリカのスタンフォード大学で僕のメンターとなってくれたアキ先生だということがわかってお互いにびっくりした。世界は狭い。

カナダとアメリカと日本の授業研究をどう比較してゆくのか、授業研究のサスティナビリティとはどういうものなのかについて協同で考察をすすめてゆくことをお互いに約束した。モーレイ校長は、日本のローカルスクールの実態について照らし合わせながらカナダの実践についての考察をすすめたいということをおっしゃっておられた。ご滞在中にもう一度機会を作って話しがしたい。

9月にトロントに行くのが楽しみになってきた。カナダ版の授業研はいかなるものだろうか。
カナダ人の先生に感想や思うところをいろいろ聞いてみたい。
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by toshishyun | 2010-06-22 21:12 | 授業研究
兵庫県の山間部にあるK小学校の校内授業研究会にお邪魔した。この小学校は、算数の授業研究の中心にノート指導を設定して研究をすすめている。

玄関に到着するなり、僕の名前でよびかけていただいた挨拶と「校長室までどうぞ」というメッセージの書かれた黒板が目に入る。初めて訪れる学校だったが、学校をあげて歓迎していただいて気持ちがほぐれた。このようなおもてなしの心を示していただいて気持ちよくお付き合いが始まるのはすがすがしい。それと同時に、授業研究の取り組みに対する学校の意気込みや姿勢が感じられ、自分もしっかりと話題提供しなければ、と身がひきしまる思いであった。

研究主任のH先生は今年赴任されて間もないということだったが、今日のワークショップ型の事後協議会は、事前の電話打ち合わせで僕が「何か事後協議会の工夫はされていますか」と言った一言をきっかけにして普段されている事後協議会の方法から計画変更されたそうで、そのような前向きで柔軟な姿勢を見るにつれ、K小学校の学校研究がこの先豊かに活性化してゆく兆しが見える思いがした。

他に授業研究の方法の課題として僕が提案したのは、現状の年間計画を変更して一人の教師が年間複数回研究授業をするというものであるが、これも学校長が真剣に検討してくださっている。K小学校の実行力を感じることができた。この提案をうまく実行に移すことができればK小学校の授業研究の質はますます向上することだろうと期待している。

講演で僕がさせていただいたお話は、ベテランのH先生と教頭のA先生がその本質を瞬時に掴まれてしっかりと受け取ってくださり、さりげなく交通整理してくださった。結果的に学校として目指している方向とうまく講演内容が合致したことがわかり、話者としてはうれしい限りである。

熱心にメモを取りながら聞いてくださっていた先生方に混じって、じっと耳を傾けていただいた一番若い先生の姿も印象に残ったが、そんな様子を見ながら、僕はちょうど氷河期世代で教員の採用も少なかった世代だから、ベテランと若手をつないでいけるちょうどいい立場にいるのだと感じた。

熱心な先生方のなかで、真摯に授業に向かい合いながらじっくりと授業をされていた授業者のF先生の学ぶ姿勢が印象的な授業研究だった。いい学校だなと充実感とともに校門を後にした。
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by toshishyun | 2010-06-21 22:45 | 授業研究

ふきだし法の立ち位置

神戸親和女子大学亀岡正睦先生に指導をしていただきながら、ふきだし法の研究をすすめている。ふきだし法とは、算数指導において、ノートに自分の考えを漫画のふきだしを使って書くノート指導の方法であるが、これが実に奥が深い。単なるノート指導にとどまらず、それを基盤にして教室に議論の共同体(discourse community)を構築するという大きなひとつのシステムとなっている。ただし、システムといってもマニュアル化されたものではなく、教師が反省的に学級集団と関わりながら、児童一人ひとりの考えのよさや意欲を丁寧に見取り、支援が必要な瞬間を捉えて共感的・肯定的に関わってゆくことを指導の原則としている。

亀岡先生によって開発されたこの実践は、開発から20年を経て、現在も先生ご本人の手で理論化が進められており、次のようなさまざまな学習科学の知見が援用されている。議論の共同体(Discourse community)、互恵的学習(Reciprocal Learning)、最近接発達領域(Zone of Proximal Development)、協同的・反省的学び(Collaborative, Reflective Learning)、などなど、どれも学習指導要領でいうところの思考力・判断力・表現力の育成と生きる力につながる理論ばかりである。私がこれらの理論に触れたのはもう10年近くも前のことであるが、このふきだし法という実践に触れていると、実に自然にこれらの理論が適用できるものなのだなぁという感想が湧いてくる。

話は変わるが、授業研究というものは、学習理論と授業実践が交差する領域に存在する研究分野であるが、ふきだし法という指導法は学習理論と授業実践をつなぐ糊のような役割をしていると感じている。とすれば、ふきだし法は授業研究の方法としても有用な役割を果たすはずで、ふきだし法を活用した研究授業によって授業研究の質の向上と教師の成長をはかることができると踏んでいる。伝統的な授業研究の研究手法に加えて、ふきだし法を方法論に加えることは、授業研究の研究をすすめてゆくうえで画期的な扉を開くことができるのではないかと期待できる。

ふきだし法については、今年は東大阪の某小学校に関わらせていただくことになっているが、地元兵庫県でも実践が進めばよいなぁと思うしだいである。私としては、そうやっていろいろと関わってゆくなかで、授業研究のあり方、教師集団の成長、ICT活用の推進、そういったものを追求・考察してゆくというスタンスが取れればよいと思っている。
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by toshishyun | 2010-06-13 00:03 | 授業研究

シカゴ授業研究グループ

About Chicago Lesson Study Group

アメリカの授業研究の拠点の1つ、Akihiko Takahashiのリードするシカゴ授業研究グループ。

2002年10月活動開始。2002年はサンマテオ・フォスターシティ授業研究会のあった年。

この授業研究グループの特徴は、学校間にまたがった授業研究の形態をとっていることです。これは、アメリカでは多くの場合、授業研究が草の根運動であり、トップダウンの形態をとらないので、算数教育に熱意のある教員を有る程度の人数集めるためにはこのような形態が良いという理由によるものと、それから、アメリカの教員が、同じ学校の同僚と協力して授業改善をするということに抵抗を持っているという理由によるものです。

また、このグループのユニークなところは、大学で学ぶ学生のための教員養成のための役割も果たしていることです。

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ところで、2月4日にミルズ大学附属小学校の研究授業、2月5日には以前に授業計画を見せていただいた公立小学校の研究授業に行ってきます。楽しみです。
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by toshishyun | 2009-01-24 14:59 | 授業研究