中植正剛 神戸親和女子大学准教授 教育工学を専門にする大学教員の日々の雑感


by toshishyun

カテゴリ:ラーニングとテクノロジー( 49 )

iphoneで360度パノラマビデオが撮影できるKogeto Dotが先月発売された。これは教材づくりや授業研究に大きな可能性をもたらすだろう。

e0149551_1853491.jpg




たった$79。安い。激安だと思う。10年ほど前にパノラマ動画を撮影しようと思えば100万円以上の機材を買わなければできなかった。

Kogeto Dot。たとえば、授業研究でいえば、新任教師など、若手の育成に活用できるのではないだろうか。

新人とベテランの能力の違いを比較する研究をノービス・エキスパート研究というが、この領域で明らかになっていることは、同じ現象を見ても、新人とベテランでは注視する個所が全く違うということである。教師について言えば、その力量や授業観によって観察するポイントが異なるものである。授業に対する理解が深まるほど、ベテランになるほど、授業者の動きではなく生徒の詳細な様子に注意がはらわれるようになると言われている。

したがって、たとえば、ベテランと若手の教師がKogeto Dotで撮影したビデオを共に観ることによって、お互いの授業の注視する個所の違いについて対話をし、それによって若手の授業を見る目を養うことができる可能性がある。

簡単に言うと、自分の授業の中で「一体何が起こっているのか?」を若手がベテランから学ぶことができるということである。

これは、これまでのビデオでもできないことはないが、難しかった。なぜなら、普通のビデオは撮影する時点で撮影者の主観でフレーム(注視点)がある程度決まってしまっているからである。そして、フレームの外側で起こっていることは見ることができない。

もちろん、ライブの授業研究だと同様のことはできるかもしれない。ただ、ライブの授業ではいろんなことが雑多に、同時多発的に起こっている。ビデオを使うと、ライブでは見逃してしまうようなことも、落ち着いてじっくりと何度も繰り返し見ながら対話ができるという良さがある。

ちなみに、エキスパートが初心者の注視点をガイドしてやることを「ガイデッドノーティシング」(導かれた気づき)と言う。いろいろな学びの場面で応用できる考えかたである。

Kogeto Dot 公式サイト
Kogeto Dot発売開始 QTVR Diary
[PR]
by toshishyun | 2011-12-04 18:52 | ラーニングとテクノロジー
今日は昨年アメリカで見かけた算数教具「デジブロック」を紹介したいと思います。これは、低学年の児童が十進位取り記数法を学習するための教具です。

e0149551_13352636.jpg

(写真 http://digiblock.stores.yahoo.net/classroom-bundles.html より引用)

低学年の児童にとって、十進位取り記数法を体感的に理解することは、重要であると同時に、困難を伴うものです。「繰り下がりのある筆算ができない」などという声を教師から聞くことがありますが、機械的に筆算を教える以前に、児童に十進位取りのイメージを体得させることができていたかどうかを点検してみるとよいでしょう。

というのも、筆算というのはアルゴリズム(形式化された手順)であるわけで、アルゴリズムとは、本来の思考活動を短縮して気軽に実行するためのものであり、そのウラで起こっていることへの理解が伴ってこそ、そのよさがわかり、有効に使えるようになるからです。また、理解を伴ってできることで、アルゴリズムにつまづいたときに、自分の力で直していくことができるのです

さて、十進位取り記数法を学ぶためにはさまざまな教具が存在します。アメリカでよく見かけたのは、Base10 Blocksというものです。
e0149551_13323666.jpg


この教具は、単位量の大きさを元にして面積や体積の考え方を学ぶには適していますが、十進記数法を学ぶにあたっては問題があります。たとえば、Base10 Blocksを使って数を表すと次のようになります。
e0149551_13413122.gif

このような表現方法では、100の位の形(面)と、10の位の形(棒)と、1の位の形(立方体)が異なり、十進数の正確な概念を表したことにはなりません。十進数の特徴は、10の位、あるいは100の位だけに注目したとき、そこには1の位と同じく、1~9の数が並んでいるということです。つまり、どの位に着目しても、ブロックは同じ形をしていなければならないのです。

この点、日本の算数セットに含まれている数え棒は優秀です。
e0149551_075677.jpg

(写真 http://www.gakkoukyouzai.com/store/show_product/891 より引用)
棒を10個集めて束にしたときに、できた束と元の棒の形状が似ているからです。しかし、それぞれの形状が似ているとはいえ、やはり似て非なるものです。たとえば、10を表す束を見たとき、それが10の位の1、つまり集合体として1つのものを表すのか、それとも棒が10個集まった状態を表すのかにあいまいさが残ります。


デジブロックはうまくできています。1を表すブロックを10個集めると、10の位を表す一回り大きなサイズのブロックが1個できあがります。1を表すブロックの形状と10を表すブロックの形状はまったく同じです。ただし、10を表すブロックのサイズは、1を表すブロックのサイズの10倍です。



同様に、10を表すブロックを10個集めると100を表すブロックが1個出来上がります。



たとえば、125は次のように表されます。
e0149551_23505778.jpg

(写真: http://www.digi-block.com/product/ より引用)

まとめると、デジブロックの特徴は次のとおりです。

・1の位、10の位、100の位など、それぞれの位を表すブロックの形状が同じである。十進記数法において、どの位を抽出しても他の位と同様に1~9までの数で構成されるという、まるでフラクタルのような特徴に対応している。
・位が10倍になると、ブロックのサイズが10倍になる
・ある位のブロックが10個そろうと、上位のブロックにカプセル化される。カプセル化されることで、それはもはや10個ではなくなり、ひとまとまりとしての1として認識される
・カプセルを開くと、下位の数に分解が可能である。

いかがでしょうか。僕はなかなかよくできた教具だと思います。こういうブロックでしっかりと遊びながら十進位取りの感覚を身につけてこそ、繰り上がりや繰り下がりのある計算について、理解をともなったマスターができるのではないでしょうか。

しっかりと位取りのイメージができていれば、たとえば繰り下がりのある筆算の指導をする際に、上位数を崩して下位数に10を借りてくるということもスッと理解させられるはずです。そして、いったん理解ができれば、あとは繰り返し練習で定着あるのみです。

さて、デジブロックはハーバード大学ビジネススクールの教授が考え出した教具で、彼の息子さんから紹介してもらいました。デジブロックのホームページはこちらです(英語です)。

http://www.digi-block.com/about/howItWorks.html

購入は下記のページからとなっていますが、日本に輸入できるのかどうかは未確認です。例によって僕はなんとかして入手しようと思いますので、お知り合いの方で見てみたいという方は声をかけてください。なお、ホームページでは、トモエ算盤が扱っていると書いていますが、残念ながらトモエそろばんのホームページでデジブロックが見つかりません・・・。

いずれにせよ、入手方法についてはこれから調査をして、後日このブログで報告します。

http://digiblock.stores.yahoo.net/

参考文献: 片桐重男(2004)「数学的な考え方の具体化と指導 -算数・数学科の真の学力向上を目指して-」 新版数学的な考え方とその指導 第1巻 明治図書
[PR]
by toshishyun | 2010-07-20 00:19 | ラーニングとテクノロジー
ツイッターというのはありがたいものだ。今日の午後にツイッターで知り合った富山県の小学校の先生が「電子黒板を思考の道具とするには」という課題を提起されたことが、自分なりに協同的問題解決の道具としての電子黒板について考えをすすめるきっかけとなった。

前提として、探求型のプロジェクト型学習ではなく教科指導という枠で考えることとした。

まずは、電子黒板というツールについて考える前に、通常の授業で次のことができているか再度チェックする必要があろう。

1. 課題提示に工夫があるか : 電子黒板を協同的問題解決の道具とするためには、課題が多様な思考を誘発するものでなければならない。単線的な思考を生み出すだけの課題では、協同思考の道具を用意しても深みのない活動になってしまう。

2. 生徒の個々の問題解決過程を可視化できているか : 教科の内容としての記述である対象記述に加えて、問題解決過程の記述であるメタ記述が普段からしっかりと可視化されているか。ノート指導や発表の中で、メタ記述を表現させる手立てができているか。また、そのようにして出された思考過程の共有ができているか。思考の結果ではなく経過がリアルタイムに共有されているか。

3. 机間指導を中心とした、形成的評価と支援ができているか :協同思考をコーディネートする教師として、生徒の思考を瞬時に拾うことのできる手立てがあるか。教育的な瞬間をみとって必要な支援ができているか。これは2のメタ記述の可視化がしっかりとできていないとおぼつかない。

これらの点が普段の授業で充実していなければ、電子黒板を協同思考の道具と位置づけるのは難しかろう。特に2を現状の授業の中で充実させることのよさは、電子黒板上における活動を、単なる発表会ではなく協同問題解決として展開するために重要な点であると思われる。

・・・このようなことを考えていると先の先生から指摘があった。「子どもたちの思考過程がノートに残り、それを教師がチェックして個別指導したり、面白い考えを拾って全体で話し合ったり。ん?今のノート、黒板の授業とどう違うんだ?」

ここで再びツールとしての電子黒板について考えなければならないだろう。子どもたちの思考過程、教師の個別指導、全体での練り上げ・・・その中で普通の黒板とは違う電子黒板のありかたとはどのようなものだろうか。

現行の電子黒板は提示の装置としてデザインされており、協同思考の装置としての機能は弱い。というわけで、デザインそのものからやり直す必要がある。しかしそれを言ってしまえばおしまいなので、協同的問題解決のツールとしての電子黒板として最低これは必要という機能を挙げたうえで、いまの電子黒板でできそうなことを探ってみる。

まずは現行の電子黒板を無視して、協同的問題解決のツールとしての電子黒板に必要な機能を考える。

1. 各生徒にデジタルガジェットを持たせて、それらの画面を電子黒板に転送・投影したり、電子黒板の画面をガジェットに転送する仕組み: つまり、協同的思考の場と各生徒の個人思考の場を往還する仕組み。現状のように教師が板書に生徒のノートを転記するのは時間の無駄。ワークフローを改善すべき。さらに、電子黒板&デジタルガジェットの特性であるマルチメディアコンテンツを取り扱うことで、問題解決のプロセスそのものが黒板&ノートのコンビとは違ったものになることが期待できる。

2. 複数の生徒が同時に電子黒板の制御権を獲得できるようにする仕組み: 一人で制御するというデザインでは提示装置の粋を出ない。現行のままでも、会議におけるホワイトボードと同じように誰かが操作をしながらみなでそれを話し合うということもできる。しかし、協同で思考をすすめるためにもう一歩進んだ機能を織り込んで、それを新しい形で活用し、授業を変革する工夫を模索することが教育を進化させるということだろう。

3 協同思考のための統合ソフトウェアを開発する :1,2が実現しても、教師が独自に協同思考のためのソフトウェアを開発していては普及はおぼつかない。テキストを含む様々なマルチメディア教材と、1,2を統合して処理できるようなラーニングマネジメントシステムの開発が不可欠。各教室の学びを学校全てで共有したり再利用する機能も不可欠

それから、電子黒板は50インチ程度ではとてもではないが小さすぎるという点も指摘したい。

以上の点をふまえて、現行の電子黒板でとりあえずアプローチがはじめられるのは2であろう。

イメージ的にはマイクロソフトのMischiefが近いかもしれない。友人が開発に関わっていて、ホームページで紹介しているのだが、これはプロジェクターに接続した1台のパソコンに20数台のマウスを接続して、複数の生徒のマウスポインターが画面に現れるというものだ。

http://moraveji.org/projects_med.html

アルファ版が日本語でも出ており、パワーポイントのアドオンとして利用できる。

http://www.microsoft.com/japan/multipoint/mouse-mischief/default.aspx

もともと、予算の少ない発展途上国向けに開発されたソフトなので、必要な台数のマウスさえ揃えれば使える。ただし、教師が用意した多肢選択式問題を回答させるというような使い方しか想定されていないようで、問題解決学習の練り上げのような高度なことはできないのが痛い。しかも、文字入力もできない・・・。もっと調査が必要だ。
[PR]
by toshishyun | 2010-06-27 22:57 | ラーニングとテクノロジー
文部科学省発行の「教育の情報化の手引き」によると、小学校におけるICTを活用した指導は「児童によるICTの活用」と「教師によるICTの活用」の二つのアプローチがあるとされている。

教師によるICTの活用で近年盛んなのが、実物投影機を利用して資料やお手本や児童のノートを提示したり、プロジェクターを用いて教師が撮影した教材の写真を提示するという「気軽な」活用方法である。児童によるICTの活用では、発表の際にOHCやパワーポイントを用いたり、調べ学習でデジタルカメラを用いて発表用の資料を製作したり、図工や社会の授業でチラシを創ったりという活用方法を目にすることが多い。私は大いにこういう活用はしてゆけばよいと思う。

しかし、気になるのは、「気軽なICT活用」のかけ声が大きくなることによって、ICTが単なる伝達と記録の道具になっていやしないかということである。というのも、最も気軽なICTの活用方法とは、何かをちょこっと伝達するという使い方だからである。そのような形での活用を否定するわけではないが、やはりICTを思考の道具として活用するという方向をもっと模索してもよいのではないかと思う。

少し話が変わるが、小学校における昨今のノート指導で重視されるノートの機能とは次のようなものである。
1. 思考の作業台
2. 思考の交流のための装置
3. 振り返りのためのポートフォリオ

ノートとは、問題解決学習において、自分なりの見通しを持ちながら思考をすすめるための道具であり、自分の考え方をモニタリングしながらそのよさを自覚するための道具であり、他者に自分の考えを工夫して伝えようとする意欲を高める道具であり、他者の考え方との共通点や差異を自覚するための道具であり、そして、自らの思考の道筋を反省的に振り返るための道具でもある。このようなノートの活用方法の基盤にあるのは、他者と互恵的・協同的に学びあう、学びの共同体という考え方である。旧来の、記録する道具、練習問題を行うための練習をする道具という位置づけを超えて、思考と協同の道具としてノートは位置づけを変えてきた。

ICT、つまりコンピュータを学習のための道具として捉えるならば、ノートが思考の道具として位置づけなおされたように、やはり思考のための道具、協同のための道具として用いるというスタンスを忘れてはならないだろう。そのためには、学習の内容や結果を記述する道具という観点だけからICTを捉えるのではなく、学習の方法やプロセスを記述する道具としてICTを捉え、授業設計に工夫を凝らしていくことが重要になる。これは、新学習指導要領総則第3章の第5節「教育課程実施上の配慮事項」に示された、1. 問題解決を通じた学習、2.言語環境と言語活動の充実、3. 見通しと振り返りのある学習 4. 教師による評価と指導の4点に強く関連している。

もともと、インターネットやPCは協同思考の道具としての位置づけがあるわけだし、国内の一部の学校や海外の学校におけるCSCLの実践と研究の蓄積はあるわけだから、すでに枠組みはある。また、新学習指導要領で定める学力や評価基準も、90年代後半に教育の情報化が始まったころと比べて、思考の作業台・交流の装置・振り返りのポートフォリオとしてICTを活用するスタンスとの親和性が高まっており、そのような使い方が不易となるための法的基盤はずいぶんと整備された。

ただし、記録と伝達に偏りがちな「気軽なICT活用」が旧来の授業方法の中で語られているのとは対照的に、黒板を媒介として集団的に思考を練り上げるという学習スタイルに特徴がある日本の教室文化の中で集団思考の道具としてICTを活用してゆくためには、旧来の授業方法に固執していてはできないことも多い。しかし、知識基盤社会における教育の望ましい姿を考えるにつけ、旧来の学級集団を軸に据えた指導方法のよさを発展継承するかたちで、授業文化そのものを変革させてゆくような改善も必要なのではないだろうか。海外の授業と比較すると、黒板文化を中心とした日本の教育はとても質が高いのは確かではあるし、そこにはまり込んでしまっては進歩の道が閉ざされる。もちろん、ICTを使って集団思考をするような授業は、最初は見劣りのするものだろうし、奇をてらったものとして映るかもしれないし、研究授業などで批判の餌食になる可能性は十分にある。しかし、それが変革の痛みというものなのだろうし、そういう痛みを共有できる教師集団であれば、それはすばらしいことだと思う。

ここで述べたようなことは、90年代後半からずっと言われ続けられたことかもしれない。しかし、人は忘れやすい生き物である。「手軽なICT活用」が広がりを見せるいまこそ、もう一度教育の情報化の本質を押さえた議論をしていかなければならないと思う。片手で気軽なICT活用についての事例を蓄積してゆきつつ、もう片方の手で思考と協同の道具としてのICT活用を探求していく、というのが現在われわれに課せられた仕事であると感じる。
[PR]
by toshishyun | 2010-06-13 22:39 | ラーニングとテクノロジー

氷上情報研出席

氷上情報教育研究会例会に出席。

丹波市の小学校に4台ずつ配備されている、ElmoのOHC(実物投影機)のデモを拝見。子どもにわかりやすいように、子ども用の説明が書かれたシールを本体に貼ることができる優れもの。とってもコンパクト。しかも、投影画像の一部を隠す機能、「ココ注目」と注意をひきつける機能、投影中のものを撮影してSDに記録する機能など、授業での活用にうってつけの機能がしっかりと入っている。うーん、うちの大学にもほしい。小1を担任している先生、明日からさっそく使ってみよう、とのこと。

もうひとつ拝見したiPadのデモは総務省のフューチャースクールなどの話も交えて。やっぱりデフォルトのままでは教育利用はちょっと使いにくいか。VGA出力も静止画と動画のみだそうで。

私からは、ポケモン株式会社のポケモンPCチャレンジをデモ。低学年~中学年向けのマウス操作&タッチタイピング練習ソフト。アルファベットの読み上げもある。上級レベルのチャレンジは、私がやっても結構むずかしい。無料ということで、さっそくオンラインで申し込む先生も。使ってみてどうだったのか、あとで聞いてみたい。

ついでに、Smartpenを紹介。ノートに文字を書きながら、周囲の音が録音できる。録音後、ノートの文字をペンでタップすると、そのときの音が再生されるという代物。ノートはあとでPCに取り込んで、ウェブで共有することもできる。紹介したとたん、2人の先生がお買い上げ。アメリカから直接買ったほうが安いので、私のAmazon.comのアカウントで注文。いいと思ったら躊躇せずに手に入れる。見習いたいところ、だけど先立つものがいつも気になって。でも、これで身の回りの人の分を合わせると4本になった。

ルブリックを活用した授業設計の簡単な打ち合わせ。研究授業は国語。

来月お世話になる小学校の授業研究についての簡単な打ち合わせ。研究として何を高めるべきなのかが目下の課題だということで、取り組み甲斐のある課題だと感じた。

氷上情報研の先生方はJAET上越大会に向けて燃えておられます。
[PR]
by toshishyun | 2010-06-13 00:21 | ラーニングとテクノロジー

Gogo Board

理科の授業などで、生徒に計測機器をどんどん使わせてやりたいけれども、高くて買えない。そんな悩みを持っている先生には、Gogo Boardというものがあります。MITで開発された教育用の機械で、安価で利用できます。

e0149551_614321.jpg


この写真では、光センサーと、温度センサー、湿度センサーをつけて、計測しています。計測されたデータは、パソコンでリアルタイムに表示することができます。

e0149551_695914.jpg


Gogo Boardは、オープンソースの基盤で、販売はしていません。ウェブサイトに掲載された設計図をダウンロードし、部品を自分で調達して、自分で組み立てられるようになっています。調達先も、Gogo Boardのウェブサイトで紹介されています。だいたい3000円くらいでできるということです。これは、Gogo Boardが、もともとは、発展途上国向けに、できるだけ安価に、手元にある素材を使って、高度な機能をもつ機器が使えるようにしようという意図で開発されたからです。

パソコン側には、Gogo Monitorという専用のソフトウェアをインストールしますが、オープンソースのネットロゴを使うと、Gogo Boardと通信するソフトを自分で作ることができます。また、ネットロゴで書かれたプログラムをGogo Boardにダウンロードすることで、パソコンからGogo Boardを切り離しても、自律して計測をするようにGogo Boardを設定できます。計測したデータは、あとでパソコンに取り込み、エクセルなど、いろいろなソフトで利用することができます。

計測だけではなくて、モーターなどの部品をGogo Boardにつけると、ロボットを制作することもできます。ネットロゴで作ったプログラムをGogo Boardにダウンロードして、ロボットをプログラミングします。

レゴのマインドストームとか、MITのクリケットと同じようなシステムですが、基盤もソフトもオープンソースなのが特徴です。

Gogo BoardのWikiには、初心者向けにネットロゴの解説があったりと、サポートが充実しています。

ちなみに、ウェブサイトはこちらです。

http://www.gogoboard.org/cocoon/gogosite/home.xsp?lang=en


ただ一つの問題は・・・説明が全部英語だということです。せっかくこんなに素晴らしいシステムが無料で利用できるのに、言葉の壁があるのはとても残念です。けれども、辞書を引き引き頑張ってみようという先生には、きっときっと素晴らしい宝物のようなパッケージです。いちおう、スペイン語と中国語もありますが、そのうち日本でコミュニティができるといいなぁと思います。
[PR]
by toshishyun | 2009-07-24 06:20 | ラーニングとテクノロジー
以前、ジオボードのことを書いたら、なんだか反響が大きくて、アクセス数が伸びました(笑)。

http://toshisyun.exblog.jp/10390716/

ジオボードはいつごろからあるのですか、という質問もいただきました。ジオボードは、アメリカに移住したエジプトの数学者、カレブ・ガテーニョによって、1950年代に開発されました。

ところで、断っておきますが、僕は、算数教育は素人です。新しい指導法などを探してアクセスされた方、申し訳ありません。ここは教具の紹介だけです。

さて、今回のアメリカの教具の紹介は、パターンブロックです。これは、日本でもよく知られた教具で、パターンブロックをどう使うかの書籍もたくさん出ていますし、日本でも東洋館出版社などが取り扱っています。

e0149551_451223.jpg


このような、色とりどりのブロックですが、形と大きさ、色が決まっています。

e0149551_4582130.jpg


写真はプラスチックのものですが、僕は、あたたかい木のパターンブロックを買いました。

次のように、黄色の六角形は、赤の台形の2倍、青のひし形の3倍、緑の三角形の6倍になっています

e0149551_542827.jpg


てことは、赤の台形は、緑の三角形の3倍ということです。このように、お互いの大きさと形がきちんと関連付けられて作られています。

シンプルな教具ですが、シンプルだからこそ奥が深くて、いろんなことが学べます。面積や対称や合同といった図形や測定はもちろんのこと、分数(足し算、引き算、通分など)のような、数や計算を学ぶのにも使えます。

Amazonでも購入できますね。250個入りと50個入りがあるようです。

ネットにも、パターンブロックがあります。マウスで簡単に操作できます。

http://gingerbooth.com/flash/patblocks/patblocks.php

[F11]キーをおして、ブラウザを最大化させて使います。使い方は次のとおりです。
e0149551_715266.jpg


パターンブロックを使った活動については、色々と本が出ているので、検索するとヒットします。たとえば、こういうのがあります。

パターンブロックタスクカード基本50選 高橋 昭彦 (著)

「パターンブロック 指導案」などと検索すると、いろんな学校でパターンブロックを使った事例がみられるので、家庭で遊ぶ時の参考になります。

それにしても、パターンブロックとか、タングラムとか、ペントミノとか、いろいろと面白い教具がありますね。

いまは、そういうのをうまく使った指導案が、インターネットですぐにみられるのでありがたいことです。
[PR]
by toshishyun | 2009-07-13 07:27 | ラーニングとテクノロジー

授業研究インタビュー

米国滞在も残るところあと少なくなって、最近はベイエリアの小学校の先生たちに、授業研究のことをインタビューしている。お一人90分程度をいただいてお話いただいている。こちらの先生は、報酬を提示しないと通常はこういうインタビューには参加してくれないものだが、みなさんとても親切で、無償で応じてくださっている。

数名から話を聞いて見えてきたのは、日本の学校の次のような良さである。

 ・ 授業研究(教員研修)の人的ネットワークがしっかりしていること。この内容なら、あそこのあの人に助言指導に来てもらったらいいというのが、すぐにわかる。
 ・ 相互扶助の文化があること。授業研究でちょっと教室を留守に、という場合の同僚のフォローがある。子どもたちに自習をさせられる安心感
 ・ 生徒が下校してからも、きちんと働く習慣。学校をよくするため、教える仕事以外の仕事も積極的にみんなで引き受けようという文化
 ・ 校長の裁量で、教員がわりと自由にやらせてもらえるところ。アメリカと違って、校長には予算や人事の権限はほとんどないが、そのかわり、自発的に頑張ろうという教員には、わりと目をつぶって自由にやらせてもらえる。
 ・ 標準テストの結果が公開されないので、総合的に子どもの学力を伸ばしてやろうという文化がある。アメリカの教師は、学力テストが公開されるので、どうしても理解をさせるのではなく、テストの点を伸ばすための教え込みになりがち

まぁ、だいたいこういうところであるが、詳細はそのうち論文にまとめようと思う。
[PR]
by toshishyun | 2009-07-07 15:44 | ラーニングとテクノロジー
授業研究 教師の授業を見る目

Sherinのビデオクラブの研究。自分達の授業をビデオに撮り、同僚と協調してその分析をするというプロフェッショナルディベロップメント。

人は、専門的な経験を積むと、ある現象のどこに注目するかが変わってくる。つまり、どんな職業でも、その職業なりのモノの見方というものを身につけてゆく。Goodwinは、そういう専門家なりのモノの見方を「プロフェッショナルビジョン」と名づけた。

教師のプロフェショナルビジョンを研究したビデオクラブでは、実践のあいだに、教師の授業の語りが次のように変化した

・ 教師の教え方から、生徒の学習活動に注目が移った
・ 教え方をどう改善したらいいかという提案から、授業で実際に何が起こっているのかを理解しようとするようになった。
・ 授業で起こったことを単になぞっているだけの発言から、その出来事を深く理解しようとする発言になった

これは、アメリカの授業研究における討論でも、確認されている。つまり、授業研究を始めたばかりのグループでは、当初は、先生の教え方をどのように改善したらよいのかという議論が中心に行われるが、次第に、生徒がどのように学んでいるのか、観察したデータを用いてその実態を理解することに時間が割かれるようになり、その理解に基づいて次の改善を考えようとする討論へと変化してゆく。

(参考文献:Sherin, M. G., & Han, S. Y. (2004). Teacher Learning in the Context of a Video Club. Teaching & Teacher Education: An International Journal of Research and Studies, 20.)
[PR]
by toshishyun | 2009-06-21 09:54 | ラーニングとテクノロジー
教師の成長のための、協調的探究活動 (collaborative inquiry)

効果的なプロフェショナルディベロップメントとは,
・ 教師の仕事に根差したものであること
・ 教師が探求と省察をしっかりできること
・ 教師同士が協調すること
・ 学校や学区の他の取り組みと関連があること
・ 信頼関係を構築し、リスクをとることができるような雰囲気や習慣を確立すること
(Darling-Hammond and Mclaughlin (1995) and Hawley and Valli (1999))

教師の学びの共同体を作ろうとするときには、その学校の特徴に沿って、習慣や価値観や信念を検討し、作り替えるという作業をしながら、リカルチャリング(reculturing)を起さなければならない。 (Fullan 2000) それは、単に組織を作り替えたりするだけでは十分ではない。教師がきちんとデータを分析して、教育実践を改善したり、リカルチャリングのプロセスに主体的に関わっていけるような具体的な支援が必要である。リカルチャリングには3年~6年かかる。

教員がデータを使いこなして、授業を改善することができる能力を高めなければならない  ←これは授業研究の目標の一つ。授業改善のためのデータの使いこなし方を学ぶ仕掛けが必要。どこに着目してデータを集めるのか、集めたデータをどう読み解くのか。


(参考文献: Nelson, T., & Slavit, D. (2008). Supported Teacher Collaborative Inquiry. Teacher Education Quarterly, 35.)

-------------------

ほとんど備忘録・・・。中途半端・・・。
[PR]
by toshishyun | 2009-06-20 08:49 | ラーニングとテクノロジー