中植正剛 神戸親和女子大学准教授 教育工学を専門にする大学教員の日々の雑感


by toshishyun

ミルズ授業研究会 その1

3月3日~6日の期間、ミルズ大学附属小学校で行われた授業研究会(レッスンスタディ)に行ってきました。

日本では当たり前の授業研究ですが、アメリカでは10年前に始まったばかりの取り組みです。

今回は、De Paul大学の高橋昭彦先生が、分数の授業をされました。4日間通して行うような授業研究会は、日本でもあまり見られないものなので、貴重な経験になりました。コーディネーターは、授業研究をアメリカに紹介されたパイオニアの一人、ミルズ大学のCatherine Lewis先生、ファシリテーターは、同じく授業研究をアメリカに紹介された、吉田誠先生です。

今回の目玉は、分数を学ぶのに、テープや棒を使うこと。たとえば、1mのテープを用意します。そして、その3分の1、4分の1、5分の1の長さの段ボールの棒を用意します。それぞれの棒の長さは言わないで、それぞれ何mなのかを生徒に考えさせます。(答は1/3m, 1/4m, 1/5m)。これは、日本の教科書に基づいた、日本流の教え方です。

日本人にとっては、当たり前かもしれませんが、アメリカには線分図というものがないので、通常はピザのような円を用いて分数を学びます。分数=円グラフというのは、アメリカで固定した考え方です。したがって、このように直線を使って分数を学ぶのは、斬新なやり方です。

それから、このやり方の特徴は、分数を「部分と全体」、つまり、1/3や1/5のように、1に対する相対的な量として捉えるのではなく、1/3m, 1/5mのように、「単位」、つまり絶対的な量として分数を捉えるところにあります。

アメリカ人は、「部分と全体」「単位」、この両方の考え方を一度にないまぜにして教えます。しかし、日本人は「部分と全体」を学ぶまえに、まず、「単位」としての分数を学びます。

直線で分数を学ぶこと、そして、単位としての分数を学ぶこと、これらによって、数直線上で分数がどのように表わされるかという理解が深まります。例えば、0mから始まる数直線があるとします。その数直線上に1m, 2m, 3mと目盛が打ってあるときに、2/5mがどこにあるか、7/3mがどこにあるか、そういうことが理解できるようになります。これはゆくゆくは、分数の掛け算・割り算に繋がっていきます。

アメリカ人の場合だと、円を使って学ぶので、分数と数直線との関連づけが難しいのです。そして、1に対する相対的な大きさとしての分数しか習わないので、そこにmやリットルなどの単位を導入して、分数を絶対的な量として考えたときに混乱するわけです。分数の掛け算や割り算でも、例えば「2/3mの1/5は?」と言われても、ピンとこないわけです。

とまぁ、こういう内容の授業が行われたわけです。

4日間で、ここで書ききれないほど多くのことを学びました。何を学んだのかは、次の投稿で書いていきたいと思います。

高橋先生の素晴らしい授業からは、授業の方法に関することを学びました。授業後の検討会や高橋先生、吉田先生、Catherine Lewis先生との雑談からは、授業研究のやり方や検討会で話し合われる内容に関すること、アメリカと日本の算数カリキュラムに関することを学びました。また、サンフランシスコベイエリアの先生とも新たに知り合う機会にもなりました。

一夜明けた今日は、吉田先生とお昼ご飯を一緒に食べてきました。アメリカの教員向けの自学自習教材を作っていこうという話を持ちかけてくださり、モチベーションが一気にあがりました。4月か5月には、吉田先生のおられるニューヨークに行って、東海岸の小学校周りをしたいと思います。実現すれば、12年ぶりのニューヨーク、楽しみです。
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by toshishyun | 2009-03-08 18:33 | ラーニングとテクノロジー