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中植正剛 神戸親和女子大学准教授 教育工学を専門にする大学教員の日々の雑感


by toshishyun

2007 TIMSS

2007年TIMSSに関する記事への感想

**** 産経新聞*******
[上位占める東アジア 秘密は「国策で初等教育に力」 国際調査]

全教科で3位以上の成績を収めたシンガポールは、徹底したエリート選抜システムが特徴だ。小学校高学年から試験による振り分けが始まり、同じ学校でも成績によって違うコースを用意するなど、徹底した能力別教育で競争心をあおる。全教科で3位以上の台湾は中学3年で全国一斉の基礎学力テストを行い、全体的な底上げを図っている。

(中略)

 「学ぶプロセス」重視の欧米に対し、東アジアは「学ぶ」こと自体に力を入れている。猿田総括研究官は「ある意味、東アジアは詰め込み教育に近く、小中学校の段階では効果があるため欧米も注目している。しかし、創造性や好奇心が損なわれるとの批判が出始めている国もある」と話している。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081210-00000502-san-soci
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うーむ。習熟度別指導は上位の生徒のうちでもほんの一部にだけに恩恵があって、それ以外の大多数には弊害のほうが指摘されているんだが。しかし、シンガポールでは成功していると、この記事は言っているな・・・。

それから、ヨーロッパは知らないけど、アメリカでは、日本の授業が「厳選された内容」のカリキュラムで「学ぶプロセス」を重視して指導しているから国際比較調査で好成績なのに対して、アメリカの授業は「やり方を教えるだけ」でしかも「詰め込み教育」になっているから成績が悪いことが指摘されているのだが・・・。実際、カリフォルニアのカリキュラムと日本の指導要領を比較してみると、アメリカのほうがなんでもかんでも詰め込んでいるのがよくわかるしなぁ。

いったい何がなんやら。混乱するなぁ。

単に産経新聞が、「アジアは競争重視の詰め込み、欧米は考え方をしっかり教える」というステレオタイプを踏襲しているだけなのか。

それとも、習熟度別指導を批判する論は岩波から出ているが、これはリベラルなアプローチによって組み立てられた論理なのか。

数学・算数に限って言えば、アメリカ人が日本の授業を「プロセス重視の優れた教育」と言っているのに、日本では欧米を「プロセス重視」というのは、国際比較をするときには、隣の芝生が青く見えるからなのか・・・。この猿田祐嗣さんという国立教育政策研究所の人は理科教育の人のようだけど、理科ではそうなのかな。

***** 時事通信 ****
[授業拡充前に成績改善=今後さらに得点増?-前回調査で理数重視へ]

国際数学・理科教育動向調査では2003年の前回調査で日本の成績が落ちたことから、小中学校の新学習指導要領で理数教育が重視されるきっかけとなった。文部科学省は両教科の時間、内容を新指導要領に沿って来年度から拡充するが、07年調査では、その導入前から学力が改善し始めた実態が浮かび上がった。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081210-00000006-jij-soci
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PISAでもTIMSSでもそうだけど、たった一回の国際調査で教育内容をあちこちいじりまわさなくてもいいのではないかと思います。なんか、教育現場を離れた政治的パフォーマンスで教育をぐちゃぐちゃとこねくりまわしてもねぇ、せっかくのいい取り組みがあったとしても、成果が出る前にどんどん捨てていっちゃうことになりそうです。そう、アメリカのように。

それにしても気になるのは、意欲・・・ですね。日本の子どもの意欲が低いのはいったいなぜか。ホントに意欲が低いのか、質問の主旨が日本の子どもの意欲をうまく測れないのか。
by toshishyun | 2008-12-10 14:45 | ラーニングとテクノロジー