中植正剛 神戸親和女子大学准教授 教育工学を専門にする大学教員の日々の雑感


by toshishyun

教育現場におけるテクノロジー利用の推移

文部科学省 新学習指導要領の円滑な実施に向けた支援策で、教材の整備に180億円。

http://www.nicer.go.jp/lom/data/contents/bgj/2008110601024.pdf


このなかで、教材の例として「電子黒板」があげられています。これは、プロジェクターを使ってパソコンの画面を表示することができる黒板で、パソコンの画面で制作した資料を投影しながら、普通の黒板のように、そこにいろいろと書き込みができるというものです。

せっかくの機会なので、学校におけるICTの利用についての流れを少し整理しておきたいと思います。あくまでも雑感です。

インターネット黎明期~成熟期(1995年~2000年くらい)には、
 ・インターネットを生徒の調べ学習に用いる
 ・意見交換や成果共有に電子掲示板やグループウェアを用いる
 ・シミュレーションのためのソフトを用いて、生徒に実際にいろいろと操作をさせてみる
のような利用のされ方が主流でした。

このように、生徒1人に1台、あるいは1人に数台というように、多数のパソコンを用意して生徒に操作をさせる使い方を「タイプI」としておきます。

もちろんこれらの使われ方がなくなったわけではありませんが、最近は、
 ・先生が自分でデジタルカメラで撮影したり、インターネットの資料を使って制作した資料をクラス全体に提示して授業をすすめる
 ・先生が作成した動く資料などをプロジェクターで提示して授業を展開する
のように、先生が自作のデジタル教材を提示する方法が多いようです。電子黒板の導入も、この流れの一環としてとらえられます。

このように、先生のパソコンだけを用意して、電子メディアの特性を活かした教材を提示しながら授業をすすめるような使い方を「タイプII」としておきます。

タイプIからタイプIIへのシフトには、次のような原因が考えられます。

 ・タイプIは、パソコン教室への移動が伴うので実施が困難
 ・タイプIは、シミュレーションやグループウェアの購入が、台数分必要であるが、かつてのように、ソフトウェアにかける予算がない
 ・タイプIで、グループウェアや掲示板を利用する場合、サーバーの設定など、教員に管理者レベルのITスキルが求められる。スキルが足りない場合は業者に依頼することになる。
 ・タイプIは、生徒のパソコン操作能力のばらつきがあるために、実施が困難
 ・調べ学習によるオープンエンドの学習は、総合的な学習の時間などで主に実施されるが、その効果測定が困難
 ・タイプIのように、生徒にパソコンを使わせて学ばせるやり方には賛否両論がある。

 ・タイプIでは、ICT利用が授業方法そのものを根本的に変えている。タイプIIは、これまでの授業方法のほんの一部にICT利用を組み込んでいるので、一部の教員だけでなく、幅広い教員に受け入れられやすい。
 ・タイプIIのようなICT活用方法は、これまでの授業方法の延長線上にあるので、これまでの教材開発の工夫や授業方法の工夫がそのまま活かせる。
 ・日本の授業方法は、ひとつのトピック(資料)についてじっくりと対話を重ねていくスタイルなので、全体の前で資料を提示してみんなで対話をするスタイルであるタイプIIは、教員にも生徒にも受け入れられやすい
 ・タイプIIは、デジタルカメラの操作方法やパワーポイントの操作方法など、基本的な技能の習得だけで事足りるので、教員にとって技術的なハードルが低い

こんなところでしょうか。
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by toshishyun | 2008-11-09 07:37 | ラーニングとテクノロジー