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中植正剛 神戸親和女子大学准教授 教育工学を専門にする大学教員の日々の雑感


by toshishyun

公園めぐりから見えるもの

今日、近所の公園を車でまわってきました。アメリカは格差社会だと実感しました。

道一つ隔てて、5分くらいしか走っていないのに、これだけの違いがあります。

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いいほうの地域の公園は、とにかく緑が多くて、のどかで、バーベキューができるようなテーブルがいくつもあります。日本人らしき親子連れもちらほら。ちびっこたちは元気にサッカーをしています。とっても平和なミドルクラスの午後という感じです。駐車場にはBMWなどがちらほら停まっています。

いいほうではない地域の公園は、駐車場からして違います。ところどころへこんだ80年代のホンダアコード。砂だらけの10年落ちのトヨタ。公園を囲む金網には「ドラッグのない環境を」のポスター。公園内もやや芝生の割合が少なく、コンクリートの部分にはストリートバスケットの設備。ベンチには中学生っぽいのが机に座っていたり、おっさんが呆けていたりします。

ここシリコンバレーはとっても物価が高いことで有名です。家賃はだいたい1500ドル(約15万円)で、これでも1ベッドルームのお部屋です。そして、驚くのは、「いいほうではない」地域でも、家賃は10万円を下らないということです。これは夫婦二人だったらこれでもいいでしょうが、子どもが二人いる家庭では、ベッドルームが1つではとても暮らせないでしょうから、やっぱり家賃は15万くらいは払わないといけません。つまり、日本の平均的なサラリーマン家庭ぐらいの年収では、「ドラッグのない環境を!」などと言っているちょっぴりスリルのある地域に住まざるを得ないのです。

さて、カリフォルニアにはAPI(Academic Performance Index)というのがあります。これは、各学校のテストの結果を指標にしたもので、いわば学校の成績です。これが教育局から公表されています。となると、もちろんいい学校のある地域の不動産価格はべらぼうに高くなるわけです。そして、そういうところにはお金持ちが集まります。そして、良家が揃った地域の学校はますます良くなります。逆もまた然りで、悪い学校のある地域の不動産価格は下落しますし、当然そこには様々な社会問題が鬱積されていきます。このあたりの不動産価格は、日本のような「交通至便」などという要素よりも、このAPIによって左右されるほうが大きいようです。

もうおわかりだと思いますが、先の「いい公園」がある地域はAPIの高い地域です。おまけに言うと、いい公園の地域とそうでない地域の公園では、遊んでいる子どもの人種構成が違います。

安全で快適な環境に住み、いい教育をわが子に施すためには、何億もする家が立ち並ぶ地域、家賃が何十万もする地域に住まなければなりません。そうではない地域の教育はお世辞にも素晴らしいといえたものではありません。
by toshishyun | 2008-10-24 16:24 | アメリカ文化