アメリカの算数教具 デジブロック
2010年 07月 20日
(写真 http://digiblock.stores.yahoo.net/classroom-bundles.html より引用)
低学年の児童にとって、十進位取り記数法を体感的に理解することは、重要であると同時に、困難を伴うものです。「繰り下がりのある筆算ができない」などという声を教師から聞くことがありますが、機械的に筆算を教える以前に、児童に十進位取りのイメージを体得させることができていたかどうかを点検してみるとよいでしょう。
というのも、筆算というのはアルゴリズム(形式化された手順)であるわけで、アルゴリズムとは、本来の思考活動を短縮して気軽に実行するためのものであり、そのウラで起こっていることへの理解が伴ってこそ、そのよさがわかり、有効に使えるようになるからです。また、理解を伴ってできることで、アルゴリズムにつまづいたときに、自分の力で直していくことができるのです
さて、十進位取り記数法を学ぶためにはさまざまな教具が存在します。アメリカでよく見かけたのは、Base10 Blocksというものです。
この教具は、単位量の大きさを元にして面積や体積の考え方を学ぶには適していますが、十進記数法を学ぶにあたっては問題があります。たとえば、Base10 Blocksを使って数を表すと次のようになります。
このような表現方法では、100の位の形(面)と、10の位の形(棒)と、1の位の形(立方体)が異なり、十進数の正確な概念を表したことにはなりません。十進数の特徴は、10の位、あるいは100の位だけに注目したとき、そこには1の位と同じく、1~9の数が並んでいるということです。つまり、どの位に着目しても、ブロックは同じ形をしていなければならないのです。
この点、日本の算数セットに含まれている数え棒は優秀です。
(写真 http://www.gakkoukyouzai.com/store/show_product/891 より引用)
棒を10個集めて束にしたときに、できた束と元の棒の形状が似ているからです。しかし、それぞれの形状が似ているとはいえ、やはり似て非なるものです。たとえば、10を表す束を見たとき、それが10の位の1、つまり集合体として1つのものを表すのか、それとも棒が10個集まった状態を表すのかにあいまいさが残ります。
デジブロックはうまくできています。1を表すブロックを10個集めると、10の位を表す一回り大きなサイズのブロックが1個できあがります。1を表すブロックの形状と10を表すブロックの形状はまったく同じです。ただし、10を表すブロックのサイズは、1を表すブロックのサイズの10倍です。
同様に、10を表すブロックを10個集めると100を表すブロックが1個出来上がります。
たとえば、125は次のように表されます。
(写真: http://www.digi-block.com/product/ より引用)
まとめると、デジブロックの特徴は次のとおりです。
・1の位、10の位、100の位など、それぞれの位を表すブロックの形状が同じである。十進記数法において、どの位を抽出しても他の位と同様に1~9までの数で構成されるという、まるでフラクタルのような特徴に対応している。
・位が10倍になると、ブロックのサイズが10倍になる
・ある位のブロックが10個そろうと、上位のブロックにカプセル化される。カプセル化されることで、それはもはや10個ではなくなり、ひとまとまりとしての1として認識される
・カプセルを開くと、下位の数に分解が可能である。
いかがでしょうか。僕はなかなかよくできた教具だと思います。こういうブロックでしっかりと遊びながら十進位取りの感覚を身につけてこそ、繰り上がりや繰り下がりのある計算について、理解をともなったマスターができるのではないでしょうか。
しっかりと位取りのイメージができていれば、たとえば繰り下がりのある筆算の指導をする際に、上位数を崩して下位数に10を借りてくるということもスッと理解させられるはずです。そして、いったん理解ができれば、あとは繰り返し練習で定着あるのみです。
さて、デジブロックはハーバード大学ビジネススクールの教授が考え出した教具で、彼の息子さんから紹介してもらいました。デジブロックのホームページはこちらです(英語です)。
http://www.digi-block.com/about/howItWorks.html
購入は下記のページからとなっていますが、日本に輸入できるのかどうかは未確認です。例によって僕はなんとかして入手しようと思いますので、お知り合いの方で見てみたいという方は声をかけてください。なお、ホームページでは、トモエ算盤が扱っていると書いていますが、残念ながらトモエそろばんのホームページでデジブロックが見つかりません・・・。
いずれにせよ、入手方法についてはこれから調査をして、後日このブログで報告します。
http://digiblock.stores.yahoo.net/
参考文献: 片桐重男(2004)「数学的な考え方の具体化と指導 -算数・数学科の真の学力向上を目指して-」 新版数学的な考え方とその指導 第1巻 明治図書